築27年のRC造の建物を無償譲渡!?「すこやかケア西宮の建物無償譲渡について」 令和6年6月議会一般質問⑥
こんにちは。
西宮市議会議員の坂本龍佑です。
12月議会の一般質問を終えました!ご覧いただいた方ありがとうございます。
と言いつつ、情けないことに6月議会の報告が終わっておりません。
12月議会の質問の報告をする前に、これだけはやっておかないと。ということで、6月議会で最も注力した課題であった「すこやかケア西宮の建物無償譲渡について」報告していこうと思います。
Youtubeにも動画をアップロードをしておりますので、併せてご確認ください。
この質問の報告を始める前に、すこやかケア西宮とは?
というところから報告を始めないといけませんね。
西宮市立介護老人保健施設すこやかケア西宮は平成9年5月に設立された西宮市の施設です。
立派な建物ですので、よかったら下のマップのリンクをご覧ください。
老人介護保険施設=「ろうけん」と一般的に呼ばれる施設で、基本的に自立を目的とした施設で、リハビリを行って、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月ぐらいの入所期間で退院して、自宅に戻ってもらうことを目指す施設という感じで理解してもらえるとわかりやすいのではないでしょうか。
そういう意味では、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅とは違う性質のものという理解をしていただければいいかと思います。
この施設は、設立当初から、西宮市社会福祉事業団に委託されて運営されております。平成18年からは指定管理制度が導入され、非公募で指定管理の指定がされております。また、指定管理でありますが、施設の運営に際しては、独立採算が可能であることから指定管理料は支払われていません。
そんな中、令和6年4月に開催された健康福祉常任委員会において、指定管理者の西宮市社会福祉事業団に無償譲渡されるという所管事務報告がございました。
この内容が、次のとおりです。
簡単に紹介しますと、市内の介護老人保健施設は、常時空床が生じている。
包括外部監査から市立施設として設置する必要がないという指摘があり、令和10年度までの大規模修繕の中長期計画において、約7億円が生じる他、市の負担は更に大きくなるという指摘がある。
その課題を踏まえて、指定管理期間を令和10年度末から令和8年度末の3年に短縮し、大規模修繕を中長期的修繕に見直すことによって、数億円の修繕費用の削減が可能となり、譲渡までの間の修繕は10年間維持できる修繕とするため無償譲渡するということでした。
監査の指摘によって、市立施設として設置する必要がない。→賛成なんです。
しかし、無償譲渡!?
ってなったのです。
築27年の鉄筋コンクリート造です。不動産会社の出身の私は、感覚的にその建物の価値が0円になるなんて考えられないと思うのですが、皆様も築27年のマンションの建物に価値はありませんって言われたら、いやいやそんなわけないでしょ。って思いませんか?
当然しっかりと検討した上で無償譲渡という結論に至ったのだろうと思い、売却金額の妥当性を検討するために、市がすべきことを4つ列挙してみました。
一つ目が資産性の検討。
二つ目が、収益性の検討。
三つ目が、市場性の検討。
四つ目が、転用の可能性の検討です。
これらを一つずつ、検討していってみましょう。
まず一つ目の資産性の検討として、財産目録や固定資産評価について確認してみました。
次の資料を見ていただくとご理解していただきやすいかと思います。
まず、建物の取得価額が約27億円、減価償却が約14.1億円となっており、現在の価値が13.6億円とされております。
次に、令和6年度固定資産の仮評価額では、地下1階から地上5階までで計6億円程度になると推測されております。
また、不動産鑑定評価を実施することも可能ですが、これについては取得されておりません。
ということで、13.6億円や6億円という評価されるような建物であることがわかります。
次に、二つ目の収益性の検討です。
残念ながら、すこやかケア西宮の決算資料を確認したところ、直近5年は株式会社の営業利益に該当するサービス活動増減差額は赤字となっておりました。
介護老人保健事業においては、2022年度時点で、4割が赤字ということから、収益を確保するのが難しい事業環境と言えるでしょう。しかし、国も介護報酬の見直しなどで収益が確保できるように手を打っていることから、今後も全く収益が出ないとは考えづらいと思います。
また、4,5階部分に中央病院の職員用住宅があります。
当然、中央病院の職員用住宅も同様に無償譲渡されますが、社会福祉法人が不動産事業を営むことも、関連会社が不動産事業も営むことも可能であり収益性があります。
内装の状態等を確認できておりませんが、30室ありますので、単純計算で一部屋6万円としたとしても、月額180万円となり、年間2160万円の収益となります。
借地料約1200万円に仮評価の固定資産税の金額約1000万円を加えても、ほぼほぼ4,5階の不動産収益で賄えることになるため、老健で最終利益を出せれば、年間黒字が可能ということになり、建物の収益性という観点でも、無償譲渡というのは、疑問が残ります。
上記のような検討を踏まえると、次に検討すべきは三つ目の市場性の検討です。
しかし、これについては他の事業者へのヒアリングが行われていません。
実際に他の事業者に意欲があったかもわからないということです。
そして、最後に四つ目の転用の可能性の検討として、特別養護老人ホームが不足しているという市内の環境を踏まえると、全国に事例もあり、この検討を行うこともできたはずです。
これらを踏まえて質問しました。
坂本
無償譲渡するという検討結果に至った経緯と資産性、収益性、市場性、転用の可能性という4つの検討や不動産鑑定をを行わず、公募もしない理由をお聞かせください。
市の回答
・開設から27年が経過し、令和10年度までの大規模修繕に約7億円の修繕費用が必要であり、今後の修繕は譲渡先が負担するため無償譲渡とした。
・建物は老健事業終了後に市へ無償で返還することを条件として、無償譲渡する予定であることから、建物の資産性の有無については考慮していない。
収益性は、市から老健事業を受けるにあたり、譲渡先の社会福祉事業団が事業計画を立てるべきであるため、市は検討しない。
・現在、市場性は低く、ただちに高まるとは考えていない。
・転用の可能性は、多額の修繕費を要するため、難しい。
・不動産鑑定は、無償譲渡が前提であるため、必要ない。
・公募を行うと、利用者に混乱が生じる可能性があり、27年間不適切な事案もなかったので、非公募とする。
ということでした。
いやいや、どうして財産目録の簿価で13.6億円も評価されている、税金で建てた市民の大切な資産を売却するのに、無償譲渡が前提なんですか。
売却先が事業計画立てるんじゃなくて、市が事業計画を立てないと売却金額は弾き出せないのではないですか?
私が売却先の社会福祉事業団だったら、儲からないような事業計画を市に提出しますよ。
そして、財政構造改善の中で、市民サービスの低下も受け入れてほしいとお願いしているときに、そんな試算でいいんでしょうか。
という想いで再質問しました。
坂本
鑑定もせず、公募もせずに、建物評価で6億円、簿価で13.6億円のものを0円で譲渡することは、利益供与に当たらないのでしょうか。仮に、他の事業者に老健施設を購入希望金額のヒアリングした場合に、一円以上で購入するとなった場合でも、無償譲渡が妥当とお考えでしょうか。
市の回答
建物を事業団に無償譲渡することで、市は大規模修繕の費用負担が必要なくなり、その後の修繕費用はすべて事業団の負担となる。また、老健事業終了後には市へ無償で返還する予定であり、事業団に提供することは利益供与には当たらないと考えている。
また、継続的にケアを行うことができることから、1円以上で購入希望の老健施設があったとしても、事業団へ事業を譲渡し、その際には、建物を無償譲渡することが妥当と考えている。
しかしながら、
今回の議員のご指摘を踏まえ、利益供与とならないよう、譲渡後の老健事業において、一定の収益があった場合には市の歳入とできるよう、事業団と契約期間や契約内容について協議を進めてまいります。
ということです。
本当は、無償譲渡をするまでの検討の内容、非公募とした手続きなど言いたいことは山ほどあって、到底承服しかねる内容ですが、譲渡した後に、利益が出た分は市の再入とできる契約内容にするということでしたので、今後議会に対する報告内容を確認しながら、市民の大切な財産が不当な無償譲渡とならないように状況を注視していきます。
財政構造改善が進む中、100万円単位の財源も絞り出しているような印象があります。
それは市民サービスであることもあります。
ですが、本来大きな財源になりうるものこそ、丁寧に検討を行なって、できるだけ市民サービスの低下を招かないようにすべきなのです。
極端な例として、1円でも高く買ってくれるところがあるならという表現をしましたが、それだけ西宮市の財政状況は厳しいのです。
財政構造改善というからには、構造を変えなくてはなりません。
根本から見直すということを根付かせていくためにも、常識に対して疑問を持って、今後も議会で取り上げていきたいと思います。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!