病院統合と職員給与補償問題 予算反対によって、1.7億の予算を生み出しました!

こんにちは。西宮市議会議員の坂本龍佑です。

5月16日・17日にかけて、西宮市議会では令和7年度のスタートを告げる「5月臨時会」が開かれました。臨時会では、議長・副議長をはじめとする各種役職の選出が行われ、同時に常任委員会の構成についても会派間で協議が行われました。

その結果、令和7年度の役職は以下のように決定されました。

  • 議長:川村議員(啓誠会)
  • 副議長:松山議員(公明党)
  • 議会運営委員長:たかの議員(ぜんしん)
  • 同副委員長:多田議員(維新)

私自身は、引き続き議長選出会派の啓誠会の幹事長として会派運営にあたるとともに、議会運営委員会の委員としても責任を持って議会運営に携わります。常任委員会については、今回は「民生常任委員会」を担当することとなりました。

これまで、「建設」「総務」「健康福祉」と多様な分野を経験してきました。今回「民生」を担当することで、任期中に全ての委員会を一通り経験できる見込みです。

今回はこの臨時会に関連し、西宮市立中央病院と県立西宮病院の統合に伴う職員の給与補償問題についてご報告します。

背景:給与補償に4.6億円の市税投入?

市立中央病院と県立西宮病院の統合により、令和7年度から新たな「統合新病院」が県によって運営されることになっています。これに伴い、これまで市の病院で勤務していた職員のうち、多くが兵庫県に身分を移して働くことになります。

この移籍に際して、西宮市は「県に移籍することで給与が下がる場合、その差額を市が補償する」という方針を示し、最大で約4億6,600万円を令和7年度予算に計上しました。

一見すると職員の安心感を得るための制度に見えますが、次のような根本的な疑問が浮かびました。

市に残る選択をする職員の給与水準は示されていないのに、補償の妥当性を判断できるのか?

なぜ給与が下がる職員に市が補償しなければならないのか?

そもそも市の職員給与は、県と比べてそんなに高いのか?

その際に、示された資料がこちら!


議会での質疑と私の問題提起

これらの疑問をもとに、私は3月12日の予算特別委員会分科会にて、以下のような質疑を行いました。

市側の答弁では、「例えば年収700万円の職員が県に移籍すると年収が650万円に下がる場合、市がその50万円を補償する」というような枠組みが想定されていることが明らかになりました。

しかし、「市に残る場合の年収はいくらなのか」という情報は一切示されておらず、「実は市に残れば600万円かもしれない」となれば、県に移籍する方がむしろ高待遇ということもあり得ます。

このような情報の不足した状況で、4億円を超える補償費を市が支出することに、市民の納得は得られるのでしょうか?

補償の必要性は本当にあるのか?

さらに、そもそもこの給与補償が「統合決定時には全く議論されていなかった」ことです。

つまり、「病院統合するから補償もしなければいけない」というセットの話ではなく、統合病院の話がかなり進んだ段階で突然出てきた話だったのです。

そうした前提を踏まえると、

・医療職として誇りを持って働いている方であれば、市の事務職として残留するのではなく、新病院でもそのまま職務を全うするのではないか。

・県に移籍した場合の給与と市に残留した場合の給与水準が分からないのに、給与補償の必要性が分からない。

・病院統合にかかる費用が増加し、市の財政は逼迫しているのに、減給補償に多額の予算を計上するべきでない。

と考え、当初予算に反対しました。

また、反対した際に、再度組合と交渉した上で、予算が提案されることを想定し、次のことを求めました。

  • 市に残る場合の具体的な給与条件を明確に示し、減給補償の必要性を示すこと
  • 当初想定されていなかった予算であることを踏まえたより厳しい労使交渉

これらの理由から、私たち「啓誠会」は当初予算に反対し、再度の労使交渉を経て、より納得できる水準での再提案を求めました。

結果:補償額は1.7億円減、内容も縮小

その後、再交渉を経て、5月定例会で修正案が提出されました。主な変更点は以下の通りです。

【補償内容の修正前後】

項目当初案修正案
補償額約4億6,600万円約2億9,000万円(▲1.7億円)
補償期間3年間全額補償初年度:全額補償
2年目:5,000円補助
3年目:7,000円補助

さらに、新たな資料により、ようやく以下の情報が明らかにされました。

  • 県に医療職として移籍した場合給与は現状の約9割
  • 市に残って事務職に就いた場合給与は現状の約8割

つまり、給与補償がなくても県に移籍した方が待遇は良いということになります。ならば、あえて補償する必要があるのか?という疑問は、むしろ一層強くなりました。

啓誠会の立場と判断

私たち啓誠会としては、今回の再提案についても完全に納得できる内容ではありませんでした。

ただし、当初の4.6億円から1.7億円が減額され、より限定的な補償内容になった点については、本項目を理由として予算に反対した私たちの問題提起と交渉が影響を与えたと考えています。

また、他会派がこの補償に対して大きな反対意見を持たなかったことから、仮に我々が再度反対しても否決される可能性は低く、賛成するべきものと考えました。

最終的には全会一致で可決されることとなりました。

教訓と今後に生かすべきこと

今回の件から得られた教訓は以下の通りです。

  • 統合・合併の際には、給与条件等を早期に職員と協議し、情報公開すべき
  • 職員組合との交渉結果は、最終的に議会の承認が必要であるという意識を当局・組合ともに持つべき
  • 市民サービスに直結する予算に一般財源を投じる際は、透明性と説明責任が不可欠

まとめ:今後の市政と啓誠会の役割

今回の議会対応を通じて、当初予算の否決と再交渉によって、給与補償費用が1.7億円削減されました。これは、市民の声を重視した慎重な財政運営の一環であり、私たち啓誠会としての成果の一つだと考えています。

この減額分が、代表質問でも訴えたような、以下のような事業に活用されることを期待しています。

  • 放課後キッズの全校展開の前倒し
  • 子どもたちの遊び場となる公園整備の前倒し
  • 高齢者の移動支援策の強化
  • 災害時の避難所備蓄の拡充

予算には「色」がつきませんが、使い道に市民の暮らしへの優先順位を反映させることは可能です。今後も、私たちは予算の使い道にしっかりと目を光らせ、持続可能な市政運営を目指してまいります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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