なぜ西宮市の待機児童は解消しないのか

8月6日の教育こども常任委員会において、西宮市の待機児童に関する報告がありました。

少子化が加速する中で、依然として西宮市は待機児童問題を解消できておらず、令和8年4月時点でも75人の待機児童が発生しています。

利用保留児童と呼ばれる、申込を行なったものの、保育園に入所できていない方は、1000人を超えている状況が続く中、「なぜ西宮市は待機児童を解消できないのか」「待機児童解消に向けてとるべき手段」についての質疑を行いました。

今回、私が最も確認したかったのは、

「そもそも、これまでの待機児童対策の何がうまくいかなかったのか」

という点です。

原因を明らかにしないまま、これまでと同じ対策を続けても、同じ結果になる可能性があります。

目次

  1. 待機児童が残った原因は「需要予測」ではなく「受け皿不足」
  2. 「小規模保育所を整備します」だけでは何も変わらない
  3. 小規模保育所最大の課題は「3歳以降の行き先」
  4. 幼稚園の認定こども園化には、市費を投入してでもスピードを上げるべき
  5. 鳴尾北保育所は閉園ではなく「10年間限定の民間運営」を公募してはどうか
  6. 大切なのは「同じことを続ける」のではなく「なぜできなかったのか」を解決すること

待機児童が残った原因は「需要予測」ではなく「受け皿不足」

まず、市に対して、待機児童が解消できなかった原因について確認しました。

大きく考えれば、原因は2つしかありません。

  • 保育需要が想定以上に増えた
  • 想定していた受け入れ枠を確保できなかった

市の計画では、令和8年度の保育需要率を45.87%と見込んでいました。

これに対して実績は46.25%です。

予測との差は約0.4ポイントであり、もちろん多少の差はありますが、待機児童が多数発生したことを説明できるほど大きな予測誤差ではありません。

質疑の結果、市からも、

「需要の伸びは概ね想定していたが、それに対応する受け入れ枠を十分に確保できなかったことが要因」

との認識が示されました。

つまり、これまでの西宮市の待機児童対策の最大の問題は、

必要な地域に、必要な数の保育の受け皿を作ることができなかったこと

にあります。

「小規模保育所を整備します」だけでは何も変わらない

市が受け皿を増やすための、今後の対策として掲げている一つが、1・2歳児を中心に受け入れる「小規模保育事業所」の整備です。

しかし、これは新しい対策ではありません。

西宮市はこれまでも、小規模保育事業所を増やす方針を掲げてきました。

それにもかかわらず、必要な地域で十分な整備が進まず、今回も待機児童が発生しています。直近の2025,2026年は1園も新規開設がなく、来年度の2027年度も新規開設の予定はありません。

そこで私は、

「これまでできなかったものが、なぜ今後はできるようになるのか」

と質問しました。

市からは、小規模保育所は比較的短期間で整備できるため、引き続き事業者募集を進めるとの答弁がありました。

しかし、「何を変えることで、これまでできなかった整備ができるようになるのか」という点について、当初は明確な説明がありませんでした。

これでは、私は実質的に無策に近いと考えています。

「引き続き募集します」「引き続き頑張ります」だけでは、過去と結果が変わる根拠がありません。

さらに掘り下げて質問したところ、市からは、

  • 市有施設などを市が改修し、保育事業者を募集する
  • 市側が不動産事業者と連携し、物件確保に関与する
  • 事業者任せではなく、市が一定程度整備に介入する

といった方法についても検討しているとの答弁がありました。

私は、ここまで踏み込んで初めて「対策」と呼べるのではないかと思っています。

具体的な取り組みに期待しております。

小規模保育所最大の課題は「3歳以降の行き先」

もう一つ大きな問題があります。

小規模保育所は原則として0~2歳児を受け入れる施設です。

そのため、3歳になったときの次の保育所・認定こども園などの「連携先」が必要になります。

ところが、この連携先を確保すること自体が難しく、小規模保育所の整備を阻害する一因となっています。

市も、法人同士で卒園後の受け入れ枠を確保することは非常に難しいとの認識を示しました。

それならば、事業者に

「連携先を見つけてから小規模保育所を作ってください」

と求めて、あとは法人間で調整してくださいね。

というのはあまりにも無責任ではないでしょうか。

本当に実現したいのならば、西宮市自身が小規模保育所と認定こども園などのマッチングに入るべきです。

必要な地域に小規模保育所を誘致し、その卒園児を受け入れる園についても市が一緒になって調整する。

ここまで行政が責任を持って関与する必要があると考えています。

幼稚園の認定こども園化には、市費を投入してでもスピードを上げるべき

課題の二つ目は、私立幼稚園の認定こども園への移行です。

西宮市では、幼稚園の利用率が低下する一方で、1・2歳児を中心とする保育需要は高まっています。

既存の幼稚園を認定こども園へ転換し、保育が必要な子供を受け入れられるようにすることは、新たな土地を探して一から保育所を整備するより合理的な方法の一つです。

一方、幼稚園側からすると、認定こども園へ移行するためには、調理室や保育室の整備など大きな投資が必要になります。

委員会では、実際の事例として、約1億円弱の整備費に対し、国費等を活用した補助が約4,500万円程度だったケースも示されました。

つまり、残りについては基本的に事業者側の負担になります。

そこで私は、

「西宮市が認定こども園化を本当に必要な待機児童対策と考えているのであれば、国の補助制度だけに頼るのではなく、市独自の補助を上乗せしてでも移行を促進すべきではないか」

と提案しました。

市に確認したところ、市独自の上乗せ補助が制度上できないということではなく、主な課題は財政負担と、これまで移行した園との公平性とのことでした。

もちろん公平性は重要です。

しかし、これまでと同じ支援内容で認定こども園化が十分に進まず、待機児童も解消していないのであれば、政策を見直す必要があります。

財政が厳しいことも理解しています。

しかし、西宮市に住みたいと思っていても、待機児童問題が解消していないことを理由に他市に転居したり、転入を諦める人がいては本末転倒です。

そう考えると、市費を投入してでも私立幼稚園の認定こども園化を推進していくことは必要な「投資」であると同時に、新規園の整備の補助に比べると、費用対効果が高いと考えています。

鳴尾北保育所は閉園ではなく「10年間限定の民間運営」を公募してはどうか

三つ目が、鳴尾北保育所です。

鳴尾北・小松周辺は市内でも特に保育需要が高い地域です。

市は当初、鳴尾北保育所を令和11年度末で閉園する予定でした。

しかし、周辺で受け入れ枠が不足しているため方針を変更し、1・2歳児の受け入れを再開したうえで、最終的な閉園を令和15年度末まで延期することになりました。

私は、この対応自体は必要だと考えています。

一方で疑問なのは、

なぜ令和15年度末になれば突然この保育需要がなくなると言えるのか

ということです。

市に確認すると、この3年間の間に新しい小規模保育所などが整備されることを期待している、という趣旨の答弁がありました。

しかし、先ほども書いたように、これまで数年間、小規模保育所の整備が十分に進まなかった現実があります。

今後3年間で必ず新しい受け皿を確保できる保証もありません。

そこで私は、別の選択肢として、

令和12年度以降、例えば10年間限定で、鳴尾北保育所の運営を民間法人に公募してはどうか

と提案しました。

西宮市が過去に示した資料では、児童1人あたりの一般財源負担は、公立保育所の方が民間保育所より大幅に高くなっています。

公立園と私立園の一般財源(市費)負担の比較

年齢公立園
1人・月額
私立園
1人・月額
1人あたり月額差
0〜2歳約24万円約5.1万円約18.9万円
3〜5歳約8.7万円約3.6万円約5.1万円
合計

これをもとに、鳴尾北保育所について私が試算したところ、延べ200名の児童が鳴尾北保育所に通うことを踏まえた一定の前提では、民間運営に切り替えることで約1億5,600万円の一般財源(市費)を抑制できる可能性があります。

新しく小規模保育所を整備する場合、事業者は土地・建物・設備などに新たな投資をしなければなりません。

一方、既に存在する鳴尾北保育所を10年間限定で利用できるのであれば、新規整備よりも事業者の初期投資を抑えることができます。

「あと10年間、この施設を使って保育所を運営してくれる法人はいませんか」

と公募することは、十分検討に値するのではないでしょうか。

市側からも、この民間移管案について「そもそもあり得ない話ではない」という趣旨の答弁がありましたが、本格的に公募するように働きかけをしていきたいと思っています。

大切なのは「同じことを続ける」のではなく「なぜできなかったのか」を解決すること

今回の質疑を通じて、私は西宮市の待機児童対策の問題がかなり明確になったと考えています。

需要そのものを大幅に読み間違えたわけではありません。

必要な地域に必要な受け皿を作ることができなかった。

これが一番大きな問題です。

そうである以上、これまでと同じように、

「小規模保育所を募集します」

「幼稚園に認定こども園への移行をお願いします」

と呼びかけるだけでは不十分です。

私は、

  • 市が物件確保や小規模保育所と卒園先のマッチングまで踏み込む
  • 認定こども園への移行には、市独自の財政支援も検討する
  • 鳴尾北保育所は10年間限定の民間運営も選択肢として検討する

といった、これまでとは違う具体的な対応が必要だと考えています。

もちろん、少子化が進む中、将来的には保育施設が供給過剰になる可能性もあります。

だからこそ、巨額の費用をかけて恒久的な施設を大量に新設するのではなく、既存施設や民間活力を使いながら、今後10年程度の需要に柔軟に対応できる仕組みを作ることが重要です。

待機児童対策は、西宮市にとって最優先で取り組むべき課題の一つです。

「これまでできなかったけれど、引き続き同じことを頑張ります」ではなく、なぜできなかったのかを分析し、その障害そのものを取り除く。

引き続き、実効性のある待機児童対策を求めていきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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