財政難の状況で給与を上げるべきなのかという議論について

3月25日で3月議会が閉会し、令和6年度が成立しました。

西宮市は、以前にもご報告していましたように単年度で40億円の赤字になっており、財政構造改善推進部という新設部署のもと、事業の見直しが図られております。

赤字の内容については、以下のブログをご参照ください。

西宮市の財政状況ってどうなの?② 〜財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠について

西宮市の財政ってどうなの?②ということで、令和6年2月に西宮市が発表した財政構造改善基本方針の大枠について書きました。

さて、そんな中で舞い込んできたのが、人事院勧告による賃上げです。

人事院勧告??

という方も多いと思うので、説明します。

人事院勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、常勤の国家公務員の給与水準を常勤の民間企業従業員の給与水準と均衡させることを基本に勧告している。

要するに、公務員には労働基本権制約がない。いわばストライキを起こすことができないわけですから、その権利を保障するために、民間の給与水準に合わせるよう勧告が出され、適正な給与を払っていこうということが目的です。

こんな感じで、ニュースにもなっていますね!↓

https://www.psrn.jp/topics/detail.php?id=28835

流れとしては、国から人事院勧告に基づいて給与を上げるように。ということで、市に対して通達があり、それを受けて市が賃金アップ案を作成し、議会に提出があり、承認されるというものになっております。

そして、今回の3月議会で市が提示したという流れです。

人事院勧告のもととなっている民間の給与ということに目を向けてみますと、皆様もご存知かと思いますが、大企業を中心に春闘による賃上げが行われています。

昨年令和5年4月の春闘の結果を踏まえたものですが、春闘の賃上げ率は1994年以来、29年ぶりとなる3%越えの3.6%。

賃上げ額は1993年以来の1万円越えとなる11,245円。

さらに、令和6年4月春闘の結果に目を向けますと、賃上げ額は月額1万6469円、率にして5.28%となり、民間企業において更なる賃上げが行われていることがわかります。

民間の給与がこれだけ上がっているのだから、公務員も給与を上げないといけないよな。ということで人事院勧告による給与増です。

さらに、今回は若手のベースアップが中心でした。

昨今、公務員の採用倍率は低下し、若手職員の離職が加速しているという実態も踏まえると、若手に手厚く賃上げをすることの必要性が生じているとされたわけです。

しかし、ここで問題です。

今って財政構造改善の取り組みの真っ最中だよな??

ということなんです。

今回の賃上げによって、生じる市の財政的負担は約5.1億円と試算されておりました。

令和6年度分については、国からの交付税によって、補填されるため、実質的な負担は生じないのですが、一度上がった給与はなかなか下がらないというのが、公務員の世界ですから、将来的には、西宮市が単独でその費用負担をしなくてはならない時が訪れます。

西宮市は今回の賃上げのバーターと言ってはなんですが、持ち家に対する住居手当をカットすることで、年間約1.4億円を捻出することを発表しました。

5.1億円-1.4億円を差し引くと、3.7億円です。

つまり年間3.7億円は更なる収支改善が必要になったということです。

これらを踏まえた上で、どう考えるべきかということで、議会で審議されました。

会派内でも様々な意見がありました。

西宮市の人件費が高いということは誰もが認識している課題です。

そして、財政難に対してもそれぞれの議員が厳しく指摘しているところであります。

しかし、様々なことを考えた上で、我々は賛成することとし、私は、啓誠会の代表として、議場で討論をさせていただきました。

会派の意見を簡単に申し上げると、国全体で、賃上げの機運が高まる中で、西宮市だけが賃上げを行わないことによるデメリットが大きいということです。

ただ、財政構造改善の取り組みが足りていないことや、来年更なる人事院勧告による賃上げが行われるであろうことを踏まえて、この1年間で取り組みが進まなければ、来年は反対せざるを得なくなる可能性があるということを申し添えました。

そして、結果として、賛成多数で可決されました。

賛成反対
啓誠会、公明党、市民クラブ、共産党、あなたの声を市政に!、牧、一色維新、ぜんしん、森

ということで、維新やぜんしんは反対したわけです。

ちなみに、啓誠会が反対した場合、本議案は否決される可能性もあったこともあり、我々も議論を重ねましたが、やはり別のところで人件費削減を行うべきという結果となりました。

しかし、維新やぜんしんが反対した理由が全くわからないということもありません。

それだけ西宮市の財政状況は厳しいものがあるからです。

今回、賛成多数で可決となったものの、西宮市の職員の数や給与に対して厳しい目が向けられているということをしっかりと認識してもらいたいと思います。

話は変わりますが、私は頑張って働いた人には、適正な報酬が支払われることが大切と考えております。

令和5年度に給料表の見直しによって、出世した人とそうでない人とでは、給与差をつけるようになりました。

しかし、それでも「出世したくない人」の増加は続いております。

確かに「出世せずに働く」という洗濯も尊重されるべきだと思います。

しかし、市において責任を負って、議員に嫌なことを言われながら、働いている方に報いる方法としては、給与や待遇といううことが一番シンプルです。

先日、担当課長に、主査や係長にとどまっている人の数を見せてもらいました。

西宮市では、局長、部長、課長、係長、主査という順に役職が続いていきますが、制度上、最短で40歳未満で課長になれるということですから、40代の係長や主査にいる人が出世したくないという人は一定数いるそうです。

そして、その人の年収を聞いてみると、700万円〜800万円になるそうです。

確かに女性で子育てと両立するとなると、出世しないという選択になるのかもしれませんが、20代で主査になることを考えると、それと同じ役職で800万円という年収になると、さすがにもらいすぎだなという感覚を持ちます。

だからこそ誰もが出世したい!と思えるような給与制度への見直しについては、再三様々な議員が指摘しておりますが、私も頑張って取り組んでいきたいと思います。

今回はこの財政難の中で、給与を上げるべきなのかという議論について書きました。

人事院勧告に賛成したことについては、様々なご意見があろうかと思いますので、またお寄せいただけますと幸いです。

最後に今回の討論の原稿を貼り付けておきます。

もしよろしければ、お読みいただけると幸いです。

人事院勧告に対する討論

議案第125号、127号、128号について啓誠会は賛成いたします。

以下、理由及び所管を述べます。

今回の議案は、先述の通り国からの人事院の給与勧告に基づくものです。

そもそも人事院の給与勧告(以下、人事院勧告)は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、常勤の国家公務員の給与水準を常勤の民間企業従業員の給与水準と均衡させることを基本に勧告を行っています。

要するに、公務員には労働基本権制約がない。いわばストライキを起こすことができないわけですから、その権利を保障するために、民間の給与水準に合わせるよう勧告が出され、適正な給与を払っていこうということが目的なわけです。

では、「民間の給与」に目を向けてみましょう。

今回の人事院勧告は、昨年令和5年4月の春闘の結果を踏まえたものですが、春闘の賃上げ率は1994年以来、29年ぶりとなる3%越えの3.6%。

賃上げ額は1993年以来の1万円越えとなる11,245円となっております。

さらに、令和6年4月春闘の結果に目を向けますと、賃上げ額は月額1万6469円、率にして5.28%となり、民間企業において更なる賃上げが行われていることがわかります。

このように労働権の制約という観点で見たときに、この30年ぶりとも言える2年間の賃上げの流れに対し、西宮市が賃上げを行わないことによる、職員のモチベーション低下は計り知れず大きいものと考えます。

さらに、今回の人事院勧告案では、特に若手の賃金ををあげることとなっております。

昨今、民間企業では売り手市場によって、人材獲得競争が激しくなっている一方で、地方公務員の採用倍率は下落し、2022年は過去30年間で最も低い、5.2倍となっております。この23年間でその倍率が半減していることからも、地方公務員のなり手不足が懸念されております。さらに、近年地方公務員の退職者数が急増しております。

必ずしも採用倍率と直結するわけではありませんが、採用倍率は優秀さのバロメーターの一つであることを踏まえると、このタイミングでの人事院勧告の不採択はそうした負の流れにさらに拍車をかける結果となることは間違いありません。

一方、財政構造改善基本方針に基づく、人件費の適正化について、我々啓誠会としても当然に実行していかなければならないものと考えております。

西宮市における人件費の割合は中核市平均と比較しても突出して高いことは周知の事実です。

人件費にかかる経常収支比率の割合は、他市と比較してR3年度ベースで8.3ポイント高くなっており、中核市平均を大きく上回る結果となっております。

この点については、早急に対応が必要ですし、この度の定員管理計画の素案では、この5年間で正規職員160名、会計年度任用職員60名の削減を目標としておりますが、更なる人員削減がなければ、人件費増に対応できないことは明確です。

また、公務員における出世意欲の低下は大きな問題と考えております。

そりゃそうかもしれません。

出世しても給与は変わらず、責任だけが増していく。このような人事制度では、誰も出世したいと思わないのが、普通ではないでしょうか。

令和5年度から新たな給与表のもと、幹部職員に手厚くなるようになっておりますが、更に価格差をつけて、パフォーマンスの低い職員に対しては厳しくすることで、財源を捻出しながら、やる気を引き出す制度が必要と考えております。

さらに会計年度任用職員についても、一度雇用されれば定年までずっと任用が続き、公募を行なっていないという実態についても、均等な機会の付与法の趣旨に沿っておらず、早急に改善をするべきと考えております。

最後に今回の人事院勧告の受け入れ理由においては、職員の住居費の減額ということがバーターであるかのような表現がされておりますが、実際の減額幅は年間1.4億円と人事院勧告による上昇分である年間4.4億円に全く足りておらず、財政構造基本方針の取り組みという観点では不十分であることを申し添えつつも、世間的な賃上げの流れ、これを実施しないことによる西宮市の採用における競争優位性の低下や職員のモチベーション低下を憂うことから、議案に対し、完全に同意するものではないものの、今回の議案については、賛成するものといたします。

また、来年には令和6年度春闘の結果を踏まえた人事院勧告による更なる賃上げが予想されることから、この一年の財政構造改善の結果が甘いと判断した場合には、反対せざるを得なくなる可能性もあることを付言し、討論を終わります。

以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

財政難の状況で給与を上げるべきなのかという議論について” に対して2件のコメントがあります。

  1. 下野三奈夫 より:

    お疲れ様、そうやって厳しい目線で市政運営等を考え議論している事に深く感銘致しました。今の国政にも堕落した考えをやめて、若い優秀な議員に能力を発揮できるポジションを与えるて国民を導いて行って欲しきと切に願っています。坂本議員此からも厳しくも優しい目で西宮市政を導いて下さい。

    1. 坂本龍佑 より:

      コメントありがとうございます!
      国政においては、国債の発行という手段があるため、地方財政と若干違いもありますが、無駄な税金の使い方については、議員からもしっかりと指摘してもらいたいものですね。
      私も必要なものと無駄なものをしっかりと切り分けて、西宮市政でがんばります!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です