保育所事業者に対する市有地の無償貸与について 令和5年6月定例会 一般質問④

こんにちは。

毎日猛暑日が続き、外に出るのも危険ですね。

今回も6月議会における一般質問の報告です!

そんなことを言っている間に8月を迎えようとしており、今更感も増してきておりますが、気にせず書いていきたいと思います。

市有地を無償で借りている事業者と民有地を有償で借りている事業者は公平ですか?

ということで、今回のテーマは保育所の事業者に市有地をただで貸しているのは、妥当なのか?という問題提起です。

ん?

西宮市は全国でもワーストクラスの待機児童を抱えており、すごくいいことじゃないか!

と思った方もいらっしゃるかもしれません。

確かにこの政策は待機児童の問題解決に一定の寄与をしているものと感じます。

ただ、こう考えてみてください。

民間から土地を借りている事業者は毎月50万円まで自己負担で、市から土地を借りている事業者はタダだとしたら、これって公平でしょうか??

資料①の通りですが、市有地を無償貸与している園は27あり、民有地を有償貸与している園は22あります。

事業者の目線で、この問題を考えるために、資料③のようなものを作成してみました。

定員60名の保育所の場合、年間の収益は約1億円・そのうち約8割の8000万円は人件費と言われています。

事務費が800万円かかると、残りは1200万円です。

このうち、民間から土地を借りている事業者は600万円の賃料を払い、市から土地を借りている事業者は支払う必要がありません。

以上のことから、同じ経営をしていても、民間から土地を借りていれば、600万円の利益となり、市から土地を借りていれば、1200万円の利益となります。

2016年度の政府調べでは、保育園事業者の平均利益率は約5.1%であることを考慮すると、1億円の収益に対して、510万円の利益というのが一般的であり、その影響は利益を倍増させるぐらい大きな影響があることがうかがい知れます。

いかがでしょうか。

不公平に感じませんか?

当然、待機児童問題は解消していかないといけませんし、保育の質を確保することは非常に重要です。

ただ、600万円余裕のある事業者は、保育士が人手不足の場合、新しく雇用することができるでしょうし、賃金をあげることも考えられます。

また、新しい教材を購入したり、おもちゃを購入したりすることもできるでしょう。

これを知ったうえで、ご両親が保育所探しをするとすれば、市有地の上に建っている事業者の方が、いいサービスをしている可能性が高いと感じませんでしょうか。

単純化すると、1000円でランチを食べるとして、ただで不動産を借りている飲食店と、100円分は不動産賃貸料を支払っている飲食店ではどちらの方がおいしいご飯が食べられる可能性が高いと思いますか?

また、この市有地の無償貸与の取りやめについては、近隣市でも様々な議論がなされております。

神戸市では、平成25年から無償貸与を取りやめ。
芦屋市では基本的に公有財産規則貸付料の半額措置とし、開園後5年間は無償、6年目以降は1/4、その後は協議。
尼崎市では市の政策として公平性を確保する為に、市有地の無償貸与を解除するべく社会福祉法人との協議を試みましたが、反対が強く平成30年から3年間協議を中断、令和3年度から令和7年度まで無償貸付契約を締結した後に、将来的に無償貸与に関する協議を再開する方針。

このようになっており、基本的には、いくらかは貸付料を徴取する流れとなっております。

また、西宮市の過去の外部監査でも同様の指摘がされており、公平性を確保するべきだということは様々議論されているところです。

さらに、公有財産規則(市の土地を貸すときのルール)によると、無償貸与していることによる、市の収入の機会損失は、資料②にもあるように約1.7億円です。

仮に、半額で貸すことにしたとしても、8500万円の収入になるわけです。

令和4年12月の議会の一般質問で取り上げた保育料の適正化の中で、こどもの年齢差によって、保育料の負担が違うことは不公平であり、市が独自で負担軽減を図るべきという趣旨の発言をしました。

詳しくは↓をご参照ください。

西宮市 保育料の適正化について 令和4年度12月定例会 一般質問④

西宮市議会の令和4年12月定例会で、保育料の適正化について質問しました。 たくさんの子どもを育てる多子家庭において、子どもの年齢によって保育料の負担額が異なる制度…

財源を理由に実現していない政策ですが、事業者から土地貸付料を徴収することで、第三子を一律で無償化できるのに匹敵するぐらいの財源になります。

そういう意味でも、貸付料の無償化を解消すべきと考え、質問しました。

質問①
市は保育事業者に対して、市有地を無償貸与していますが、民有地を有償で借りている事業者も存在しています。同額の収入なのに、不動産の賃借料で差があると、同質のサービスを提供できず、公平な競争にならない為、少額であっても賃借料を徴取すべきではないでしょうか。

市の回答
費用負担の違いはあるものの、機会の公平性は確保されていると考えております。また、土地の無償貸与は公有財産規則に基づいても問題のないものと認識しており、今後も変更の予定はありません。

機会の公平性は確保されている。公正である。

このような理由で、却下されました。

事業収支についての検討・公平性に対する検討・他市事例・財源といった観点から質問を組み立てただけに非常に残念でした。

というよりも将来的に見直す必要性すらもなく、現在の取組に何ら問題がない。という回答にはただ驚くだけでした。

もちろんそれに伴い、貸付料を原資として保育料を低減することも却下されました。

神戸市では、公平性を理由に無償化を取りやめたという答弁の記録があったので、それを紹介し、再質問しましたが、答弁の内容は変わりませんでした。

私は民間企業の競争はあくまでも公平であることが非常に重要と考えております。

民主主義、資本主義の大原則ですね。

ただ、なかなか西宮市と心を同じくすることはできなかったようで残念です。

この無償貸与の制度は、昭和40年代から始まっており、現在市有地を無償で借りている事業者の既得権益になっていると感じております。

今回の質問ではいい結果を残すことができませんでしたが、いずれ必ず達成するという強い気持ちで今後も向き合って参ります。

是非、この件について、ご感想をお寄せいただけると嬉しく思います。

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました!!

保育所事業者に対する市有地の無償貸与について 令和5年6月定例会 一般質問④” に対して3件のコメントがあります。

  1. よし より:

    いまちょうど子供の保育園入所希望を出しているタイミングで大変興味深く思いました。
    公平性は大変重要なポイントだと思います。
    ただ保育園はその経営者や園の方針で金儲けの為にやっているところもあれば、赤字でも真面目に保育やっているところもあるので市の補助を有効活用しているところもあって、一概に何が正しいか言えないと思います。
    つまり真面目なところがちゃんと報われたら良いので、補助しているところは財務状況を公開し私利私欲のために使われていないかの確認し、また保育の面でも評価を行って、また1人でも多くの待機児童を受け入れられるように努力してもらえたら問題無いと思います。
    また逆に保育園としてふさわしくないところや、金儲けのための手段としてやるようなところは、ちゃんとそういう評価になって淘汰されるようになって欲しいと思います。
    きっと本来であれば、需要と供給のバランスが、需要が強いと相応しくないところでもやっていけるので、供給過多の状態を作り競争原理を働かせて預ける方が選べる状態にすることが大事だと思いました。

    1. 坂本龍佑 より:

      ありがとうございます。
      お金儲け=悪ということはなく、お金を儲けるということは、全てではないですが、一般的にはそれだけ社会への貢献度が高いという意味もあると思います。
      性善説に立って、基本的に全ての事業者は真面目にやっているものと考えておりますが、やはり税金を預かっている以上、その財源は有限です。
      私立保育園の建設に対しても、補助金を出していることを考えると、基準に則って、事業を行っている以上、どこの保育園が真面目で、どこが不真面目だと決めることは難しいと思います。
      これからの少子化を考えると、供給過剰にならないように留意しながらも、待機児童問題の解消と並行して取り組んでいくべきかなと考えております。

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